「塗料粘度」の重要性と測定方法


塗料粘度を測定しないと一体どうなる?

「塗料粘度」の測定は、膜厚や仕上がり等の塗装の品質を保つために非常に重要な工程です。
粘度は「塗料」と「溶剤」が適正な比率になっているかを判断し、適正であれば乾燥後の膜厚も一定に保つことができます。
逆に、正しく測定せず感覚に頼った希釈や年中同じ希釈具合で塗装を行うと、目標とする塗膜性能が発揮されなかったり、塗装不良を引き起こす可能性があります。
塗料粘度を測定しないと起きるトラブル
- 塗料が薄まりすぎることで、スケやタレが発生する
- 塗料粘度が高過ぎると、ゆず肌や外観悪化が起こる
- 目標の色や艶が発色されない
- 本来の塗膜性能が発揮されない
塗料粘度測定のポイント
塗料粘度を安定させるためには、ポイントを抑えて管理することが重要です。
そのポイントは3つあります。
1. 誰が測定するか
手作業になるため、測定方法にバラつきが生じる可能性があります。測定方法には様々あり、定められている規定は特にありませんが、誰が測定しても変わらないよう社内で測定方法を決め、マニュアル化しましょう。
2. 塗料ごとの希釈率を守る
塗料のカタログ等を見ると、必ず希釈率が書いてあります。しかし、メーカーや商品によって、粘度カップ測定時の秒数で書かれていたり、塗料とシンナーの希釈比率で書かれていたりと様々です。そのため、似ている塗料だから同じだと思いこまず、推奨の希釈率を参照した上で、気温や作業性、塗装機との相性によって調整すると良いでしょう。
3. いつ測定するか
液の粘度は非常に繊細で温度(気温)によって簡単に変わってしまいます。基本的には寒ければ粘度が高く(硬く)、暖かくなれば粘度は低く(ゆるく)なります。一定の温度で測定できる様作業環境を管理しましょう。基本的に、どの塗料でも室温20℃で希釈することが望ましいとされています。
塗料粘度の測定方法
粘度計には目的に応じて様々なものがありますが、基本的に塗装現場の場合は「粘度カップ」と「ストップウォッチ」を使用します。
本解説では、アネスト岩田㈱製の粘度カップ「NK-2」を例に解説します。
粘度測定手順

1. 塗料必要量をカップや丸缶に分け、商品ごと指定の希釈比率になるようシンナーで希釈し、撹拌する

2. 希釈後塗料の入った容器に粘度カップを沈め、ストップウォッチを用意する
3. 塗料から粘度カップをまっすぐに持ち上げ、塗料の出始めと同時にストップウォッチをスタートさせる
4. 塗料の出終わりと同時にストップウォッチを止め、秒数を確認する
5. この塗料が粘度カップから滴下する秒数で塗料粘度を表します。塗装不良対策のため、この秒数とその日の温湿度を記録・管理して自社に最適な塗料粘度を把握し、室内の温湿度によって少しずつ調整してください。
「粘度」とは
粘性を数値で表す度合い。粘度はずり速度に対するずり応力として定義されます。
類義語:粘性係数、粘性率
y(ずり速度)=dv(微少速度)/dx(微少厚さ)
t(ずり応力)=F(力)/A(面積)
μ(粘度)=t(ずり応力)/y(ずり速度)
=(F/A)/(dv/dx)
単位はSI単位ではパスカル秒(Pa・s)、CGS単位ではポアズ(P)ですが、塗料分野では、粘度カップの秒数など独自の単位が使用されています。
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