工業用洗浄剤の種類と特徴
工業用洗浄剤にはどんな種類がある?
特徴とメリット・デメリットについて解説
工業用の洗浄剤の種類は、大きく分けて3つあります。
- 水系:一般的に工業用洗剤と呼ばれるもの
- 準水系:元々可燃物であったものに水を加え、燃えなくしたもの
- 溶剤系:可燃性溶剤(炭化水素系、アルコール系等)、不燃性溶剤(フッ素系、塩素系、臭素系)
1つずつ紹介します。
水系洗浄剤(無機アルカリ+界面活性剤など)
一般的な洗剤の工業用verと考えると分かりやすいです。
原液を水で0.5~5%程度で希釈し、洗浄装置で浸漬超音波洗浄やシャワー洗浄など、油汚れや無機系の汚れ、タンパク質汚れの洗浄に使用されます。
使用後の洗浄液を廃棄する際は産廃処理をするか、排水処理設備が必要となります。
金属加工の脱脂、メッキ前の脱脂、レンズ製造工程などの現場で多く使用されています。
- 【メリット】
- 毒性が低く、人体に対して優しい
- イオン性の汚れの洗浄性に優れる
- 希釈して使用することができるため、洗浄剤のコストを低く抑えることができる
- 引火性が無く非危険物の為、作業の安全性に優れる
- 引火性が無い為、洗浄装置は非防爆型の仕様でよい
- 【デメリット】
- 金属洗浄の場合、錆が発生するリスクがある
- 乾燥性が良くない
- 排水処理設備が必要
- すすぎ工程に多槽を必要とする場合、洗浄装置が増大する可能性がある
準水系洗浄剤(グリコールエーテル+界面活性剤+水など)
準水系洗浄剤は水溶性溶剤(アルコール系やグリコールエーテル系)に水を一定量配合することで消防法の危険物から外し、安全性を高めた製品です。
溶解力が高い為、脱脂洗浄だけでなくプリント基板のフラックス除去やレンズのピッチ落としにも用いられます。
液単価が高価なので付加価値の高い製品に使用するのが一般的です。
- 【メリット】
- 溶解力が高く用途が広い
- 毒性が低く、人体に対して優しい
- 引火性が無く、火災の危険が無い。また、危険物倉庫での保管が不要
- 準水系洗浄剤で界面活性剤を含有していないタイプは、蒸留再生によるリサイクルが可能でコストを抑えることができる
- 【デメリット】
- 洗浄液単価が高価
- 水を含むため金属洗浄の場合、錆が発生するリスクがある
- 水を含むため、乾燥性に難がある
- 樹脂、プラスチック素材の洗浄はできない
溶剤系洗浄剤について
溶剤系洗浄剤には可燃性溶剤と不燃性溶剤の2種類があり、性質も異なります。
可燃性溶剤
可燃性溶剤の洗浄剤には炭化水素系とアルコール系があります。
最近の工業洗浄剤でトレンドとなっている炭化水素系洗浄剤については、下記のページで詳しく説明します。ここではアルコール系について解説します。
炭化水素系洗浄剤について
◎アルコール系洗浄剤
アルコール系にも、大きく分けて単体アルコールと変性アルコールがあります。
単体アルコールは主に光学関連などでIPA(イソプロピルアルコール)が多く使用されており、水リンス後の水置換~乾燥までを行うことが可能です。
変性アルコールは主に手拭き洗浄で使用され、ネオエタノールやソルミックスなどが一般的に使用されています。
- 【メリット】
- 隙間浸透性に優れるため、微細な部品の洗浄に適している
- 毒性が低く、人体に対して優しい
- 比較的素材を選ばず使用できる
- 【デメリット】
- 洗浄剤のコストが高くなる傾向がある
- 吸湿性があるため、錆やシミのリスクがある
- 引火性があり危険物のため、作業上の安全配慮が必要
- 引火性があるため、洗浄装置は防爆型の仕様が必要
不燃性溶剤
不燃性溶剤の中で代表的なものとして、塩素系、フッ素系、臭素系が挙げられます。
それぞれの説明は下記ページで解説していますのでご覧ください。ここでは不燃性溶剤に共通する特徴について説明します。
塩素系洗浄剤について
フッ素系洗浄剤について
臭素系洗浄剤について
- 【メリット】
- 引火性が無く非危険物である
- 各種の加工油に対する洗浄性に優れる
- 乾燥性に優れる
- 蒸留再生が可能であり、ランニングコストを低く抑えることができる
- 【デメリット】
- 発がん性や生殖毒性など、種類によっては人体への毒性が高い為作業環境に配慮が必要
- PRTR法や水質汚濁防止法に該当する場合があるため、環境への負荷が高い
- 環境対応や職場改善の流れから、炭化水素系への切り替えが進んでいる
洗浄剤の選定について
このように各洗浄剤にはそれぞれメリット・デメリットがあり、洗浄の対象となる汚れを落とす洗浄剤を選定する必要があることは勿論、汚れの溶解性、洗浄後の乾燥テストも必要です。また、お客様の作業環境等によっても選定する洗浄剤は変わります。
洗浄剤の選定の仕方についても解説しているのでこちらもご覧ください。
洗浄剤の選定について
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