フッ素系洗浄剤の特徴と洗浄方法

フッ素系洗浄剤の特徴と洗浄方法
フッ素系洗浄剤の特徴と洗浄方法

一番環境負荷の少ないフッ素系洗浄剤は?
特徴とメリット・デメリットについて解説

フッ素系洗浄剤は、不燃性で人体に対する安全性が高く、乾燥性・浸透性に優れ、樹脂製品等へのケミカルアタックが極めて少ないことから、精密洗浄や光学部品、プラスチック、プリント基板の洗浄用途に幅広く使用されてきました。

 

しかし、オゾン層を破壊してしまう特徴から環境問題となり、その代表格であったHCFC-225は地球温暖化係数(GWP)の数値が高いことから、2020年に日本では全廃となりました。

 

今後も厳しくなると予想される環境保護の観点から、洗浄剤選びを慎重に考えている方も多いと思います。こちらでは、そんなフッ素系洗浄剤について解説します。

フッ素系洗浄剤のメリット・デメリット


  • 【メリット】
  • 不燃性である(消防法に非該当)
  • 蒸気洗浄が可能
  • 乾燥性に優れる
  • 表面張力が小さく浸透性が高いため、微細な隙間の洗浄に適している
  • 金属部品を腐食せず、プラスチック部品へのアタックも小さい
  • パーティクル等の除去性能に優れる
  • パーティクル等の除去性能に優れる
  • 塩素系、臭素系溶剤の洗浄機を転用できる
  • 蒸留再生が可能
  • 【デメリット】
  • 脱脂力が弱い(HCFCを除く)
  • 洗浄液が高価でランニングコストが大きい
  • 再生ロスが大きい

フッ素系洗浄剤を使用した洗浄方法


洗浄剤としては万能ともいえる性能を持つフッ素系洗浄剤ですが、今回は3つの用途を紹介します。

①精密部品の除塵洗浄

 

精密部品の除塵は塵埃を嫌う製品に対し、浸漬超音波洗浄で付着した塵埃を製品から脱落させ、仕上げにベーパー洗浄・乾燥させて洗う方法です。この際、フィルトレーション(ろ過)と蒸留再生を組み合わせ、洗浄液の清浄度を維持していきます。

②水や炭化水素洗浄剤の置換・リンス・乾燥

 

水や炭化水素洗浄剤の置換・リンス・乾燥剤として用いられることもあります。

 

光学部品などは水系洗浄剤+純水で洗浄後、製品に付着した水滴を除去しなければなりません。

この際にフッ素系洗浄剤を使用し、浸漬超音波洗浄+ベーパー洗浄・乾燥することで、製品表面に付着した水滴を置換し、乾燥させることで水ジミの発生を防ぐことができます。

 

また、近年では炭化水素洗浄剤で洗浄した製品の乾燥工程として、表面に付着した炭化水素洗浄剤をフッ素系洗浄剤で洗浄し乾燥させることで、乾燥時間の短縮や品質向上、設備コストを抑える洗浄方法も確立されています。

③金属切削加工・プレス加工部品の脱脂洗浄

 

金属切削加工・プレス加工部品の脱脂については、高い溶解性を持つフッ素系洗浄剤を使用し、浸漬超音波+リンス洗浄+ベーパー洗浄・乾燥することで高い洗浄効果を発揮します。

 

この方法は、炭化水素真空ベーパー洗浄・乾燥機と比較し、洗浄設備の導入コストを抑えることができ、尚且つ洗浄時間短縮が見込めます。

フッ素系洗浄剤と環境問題の歴史


平成以前より、「フロン」は化学的な安定性が高いことから地上で分解されにくく、成層圏で紫外線により分解される際に発生した塩素がオゾン層を破壊してしまうことから、環境問題として取り扱われるようになりました。

 

この「フロンCFC-113」は、工業洗浄において毒性が低く、素材へのケミカルアタックが少なく、乾燥性も高いことから理想的な洗浄剤として幅広く使用されてきました。しかし、上記の理由から1987年に「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」により、排出規制がかかり、特に冷蔵庫やエアコンにも使用されていたCFC-113は1996年に全廃が決まりました。

 

そこで水素を添加し分解しやすくしたHCFCが代替品として登場しましたが、やはり二酸化炭素と比較して地球温暖化係数(GWP)が著しく大きい事から、日本では2020年に全廃されました。

 

現在は、更なる代替品としてHFC、HFE、HFOが使用されています。それぞれを地球温暖化係数が小さい順に並べると、HFO(<1)⇒HFE(約300~600)⇒HFC(約800)となり、一番値が大きいHFCは地球温暖化対策推進法に該当することから、条件に合うか検討して使用する必要があるでしょう。

弊社はこれまでの経験や知見に基づき、お客様毎に最適な洗浄剤を各メーカーの中から選定する事が可能です。
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