金属塗装の前処理とは
金属塗装に欠かせない、前処理の目的と種類について
金属塗装の目的は美観だけでなく、金属を錆から守ることも役割の1つとされています。
塗装されていない金属は、時間の経過とともに表面が変化し瞬く間に錆が発生しますが、塗装をした製品は表面が塗膜によって覆われることで直接水や空気の影響を受けにくくなり、錆が発生しにくくなるため活用の幅が大きく広がります。しかし、いきなり金属に塗装をしては塗料が密着しにくいことがあり、期待される塗膜性能が発揮されにくいので「前処理」が必要となります。
金属塗装の前処理の目的とは
前処理とは、塗装や加工といった本工程の前に行う処理の事を言います。上で述べたように、金属を錆から守るため前処理を行いますが、具体的には3つの目的があります。
- 1.油や汚れなどの不純物を取り除く
- 2.塗料と素材の密着性を向上させる
- 3.素材の酸化を防ぐ(金属素地)
<前処理の目的-1>油や汚れなどの不純物を取り除く
塗装をする面にホコリや加工油などの汚れが付着していると塗料がしっかり密着しません。
塗装して外観が綺麗に仕上がっても、実は汚れの上に塗膜が浮いている状態ですので剥がれやすくなります。
また、汚れが酸や塩などの酸化促進物質を含んでいる場合、塗膜の下で錆が一気に広がってしまいます。
そのため、脱脂力の強いアルカリ性の脱脂剤や界面活性剤を含んだ脱脂剤で洗浄します。
<前処理の目的-2>塗料と素材の密着性を向上させる
金属の表面と言えば、凹凸が無くツルツルしていることが想像できます。
このままでは塗料が密着できませんので、塗膜が剥がれないように塗料の食いつく足場を作る必要があります。
<前処理の目的-3>素材の酸化を防ぐ(金属素地)
金属にとって錆は大敵ですが、素材に皮膜を作ることで腐食を防ぐことができます。
また、皮膜があると、塗膜に傷が付いてしまっても素材に錆が広がるのを防ぐ効果もあります。
金属塗装の前処理の種類について
金属塗装の前処理には、大きく2つの方法があります。
機械的方法
サンドブラスト、ワイヤーブラシ、蒸気脱脂などで表面の錆や油を取り除く方法
化学的方法
主に脱脂洗浄をした後に、金属表面をリン酸塩皮膜で覆うことで保護する方法
特に防錆力が求められる場合、化学的方法が選択されることが多くあります。化学的方法にも種類があるのでご説明します。
塗装前処理の化学的方法について
リン酸塩皮膜を代表するものとして、「リン酸亜鉛処理」と「リン酸鉄処理」があります。その他にもリン酸マンガンやリン酸ジルコニウム等様々な皮膜がありますが、メーカー各社毎に特長が異なります。
<リン酸亜鉛処理>
特徴:鉄素材向けの前処理として、最も防錆力と付着性に優れる。
リン酸亜鉛が溶解することで金属表面の防錆効果を発揮する。
処理後の状態:処理された表面は灰暗色で艶が消えたような状態になる。
表面を爪でこすると、爪が少し削れ白く跡が残る。
用途:屋外使用製品
デメリット:処理時にスラッジが出るため、ろ過や処分が必要。
<リン酸鉄処理>
特徴:脱脂と表面処理を同時に行えるタイプもあり、工程を短縮することができる。
高圧温水洗浄機を用いて処理することも出来るので、処理槽に入らない大きさのワークも処理することができる。
金属イオンとリン酸が結合し、リン酸鉄の皮膜を作る。
処理後の状態:干渉色と言われる虹色のような金属表面になる。
用途:室内使用の鋼製家具、大型金属製品
デメリット:リン酸亜鉛処理に比べて防錆力が劣る
塗装前処理の化学的方法の選定
リン酸塩処理の処理方法には、刷毛・浸漬・スプレー等があり、設備金額やワーク形状、処理量、錆や油の状態で使い分ける必要があります。
また、最近は低温のリン酸亜鉛皮膜剤に切り替えるケースが増えています。このメリットは、光熱費の低減だけでなくスラッジ量も1/3程に低減させることができ、表面調整を入れる事で緻密な亜鉛結晶を形成するので耐食性や密着性が向上します。
前処理をしても塗膜が剥がれてしまう場合
①まずは確実に脱脂ができているか確認しよう
前処理を行ったのに塗膜が剥がれてしまう場合は、脱脂が不十分であることも考えられます。
塗膜が剥がれたワークの油分残りを確認するのに、ブラックライトが有効です。
加工油に蛍光成分が含まれている場合はブラックライトで紫外線を当てることで、油分を光らせて脱脂状況を確認することができます。
特にUVアーテルSは製造分野での実績が豊富なブラックライトで、可視光をほとんど含まず強い紫外光で脱脂確認を行うことができます。
※UVアーテルSであっても油分に蛍光成分が含まれていない場合は発光させることができません。購入前にデモ機を借りて確認するのがオススメです。
UVアーテルSの詳細・デモ機についてはこちらから↓
②拭き取り脱脂で確実に油分を拭き取ろう
再塗装に回す前に、きちんとワークの油分を除去するようにしましょう。
同じ状態では塗装が取れないように厚塗りしたとしても密着性は悪いままです。
再塗装のワークが多くない場合は、拭き取り洗浄剤で狙った部分を確実に拭き取るのがオススメです。
塗装前拭き取り洗浄剤についてはこちらから↓
③洗浄機の性能が落ちていないか確認しよう
塗装剥がれが起きた場合は、塗装工程だけでなく洗浄工程を疑うことも大切です。
超音波洗浄機の場合、超音波発生器の故障により洗浄槽内の超音波が均一でないと洗浄ムラが起こることもあります。
オタリ株式会社の「ソニックウォッチャー2」「超音波ビューワー」等を使用し超音波の発生状況を毎日管理することで、塗装剥がれが起きた際にすぐに洗浄工程に問題がないか確認することができオススメです。
オタリ株式会社の超音波測定装置についてはこちらから↓
塗装剥がれの課題解決や自社に合った前処理工程の選定が難しい際は、
塗装品質向上のプロフェッショナルであるNCCへお気軽にお問い合わせください。
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